インドの渦巻きぐるぐる系スイーツ「チロテ」 

中秋月餅の流れで作った螺旋酥(千層酥)
渦巻きパイ生地づくりがあまりにも楽しかったので、
以前から気になっていたインドの渦巻きぐるぐる系スイーツ、
マハーラーシュトラ州のチロテ(Chirote/चिरोटे)に挑戦してみたくなった。
ディーパーワリ(ディワーリー)によく作られるので、
今年はこれでいこうと即決。

ちなみに、中秋節もディーパーワリも、
毎年旧暦つまり太陰太陽暦に合わせて日にちが決まる。
2024年は、中秋節が9月17日、ディーパーワリが10月31日だった。
来年2025年は、中秋節が10月6日、ディーパーワリが10月20日になる。

※ちょっと話がずれるけど、
ガネ様生誕祭ガネーシャ・チャトゥルティーは、
マハーラーシュトラ州では4日目の月(チャトゥルティー)から10日間続く大祭で、
その最終日は十五夜、つまり中秋節にあたる。
単なる偶然なんだろうけれど、
中秋月餅とガネ様にお供えするモダック(モーダカ/コルカッタイなどなど)は
存在感がどこか似ている気がする。

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インド式パイ生地づくりと中華式パイ生地づくりの違い

中華式パイ生地づくりは伸ばしたり、くるくる丸めたりがとにかく楽しく、
そして美しい渦に心躍り、食べる時のサクサクしっとりした幸福感まで
トータルで満足度の高いスイーツなのだけど、
インド式も同様だった。
でも、そのアプローチが全然違う、
つまりお国柄がにじみでてしまうのが、ものすごく興味深かった。

中華式パイ生地の作り方を簡単に説明すると、
水油皮というしっとりした生地に、油酥というサクサクした生地で包んで塊にし、
それをリボンのように細長く伸ばしてから、くるくる丸めて層を作る。
中に餡(今年は塩卵+小豆ピーナッツ餡にしてみた)を詰めて団子状に整形し、オーブンで焼く。

一方、インド式は、
薄焼き無発酵パン「ロティー」づくりの延長線(Chiroteという名前もその関係?)といった作り方。
薄く伸ばした生地(粉、水、ギーを使用)を何枚も重ねて層にする。
その際、コーンフラワーとギーをペースト状にしたものを挟んでいき、それを巻き寿司のように丸めて層を作る。
円盤型に伸ばして整形し、油で揚げ、パウダーシュガーをふっていただく。

生地にスージーと呼ばれるセモリナ粉(粗挽き小麦粉)を混ぜるレシピと、小麦粉(マイダ)だけで作るレシピがあるが、スージーを混ぜる方が一般的(かつ扱いやすそう)。

初めなので、まずは混ぜるレシピにトライしてみた。

チロテづくりの参考レシピ

参考にしたレシピは以下の通り。

◎マラーティー料理本の決定版、Saee Koranne Khandekarさんの
Pangat, a Feast: Food and Lore from Marathi Kitchens (リンクをクリックするとAmazonのページに飛びます)

◎マハーラーシュトラ州州出身で現在は米国在住のArchana Mundheさんのブログ “Ministry of Curry”
https://ministryofcurry.com/chirote/

◎Youtube動画のChirote Recipe | How to make Chirote | Diwali Sweet | चिरोटे | OvalShelf

番外編として、マイダだけで作る繊細なChiroteのレシピも置いておく。来年試してみたい。
◎Delicate Chirote – Marathi Recipe by MadhurasRecipe
https://madhurasrecipe.com/ganesh-festival/delicate-chirote-marathi-recipe

インド各地のチロテの仲間たち

タペシュワラム・カージャー
B.K.Viswanadh, CC BY-SA 4.0 https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0, via Wikimedia Commons


Wikipediaによると、
Chiroteは、マハーラーシュトラ州だけでなく、カルナターカ州でも作られ、
Chirotiという呼び名もあるらしい。
テランガーナ州にも同様のものがあり、PheniやPeniと呼ばれているとある。
そういえば、バミセリを甘い牛乳やアーモンドミルクに浸したスイーツも同じ名前で、
ハイダラーバードで食べたことがあるけれど、何か関係があるのだろうか。

そして、Khaja(カージャー)と呼ばれるよく似たスイーツもあるらしい。
こちらは平らではなく厚みがあり、揚げたあとにシロップに漬ける。
ビハールのナーランダ県のシラーオ・カージャー(Silao Khaja /सिलाव का खाजा) は
地理的表示(GI) 指定されているとのこと。

アーンドラ・プラデーシュ州にも、
タペシュワラム・カージャー(Tapeswaram Khaja/తాపేశ్వరం కాజా) という
有名な郷土菓子があるようだ。

チロテに見るマーラーティ人の美意識

シロップに漬けた揚げ菓子は、
ずっしりと甘く、いかにもインド的な味わいだ。

だが、チロテの面白さは、
揚げたあとは、ただパウダーシュガーをさっとふりかけた程度に
とどめているということ。
これはかなり特異な気がするし、
ここまで控えめな甘さのインド菓子は他に頭に浮かばない。

もちろん、シロップ漬けバージョンもあるようだが(その方が絶対インド人好み)、
でもチロテの基本はこの素朴な仕様。
パイ生地のサクサクした食感を楽しみたいならば、
シロップ漬けより断然こっちの方がいい。
これは、マーラーティ人の美意識なんだろうか。

あるいは、断食の日に食べてもいいようなので、
その関連でシロップ漬けはご法度なんだろうか。
もしかするとスイーツでなくカテゴリーとしてはスナックなのかもしれない。

一見、硬そうに見えるかもしれないが、
口に入れるとサクッ&ほろっとした、ごくごく軽い食感、
あなた本当にインドのお菓子なの?と
聞きたくなる控えめな甘さ、
なにより作るのが楽しい!

螺旋酥づくりは、
色(ココア、ターメリック、抹茶)を混ぜてカラフルバージョンを楽しんだので、
来年は、ディーパーワリの華やぎを感じさせる
カラーチロテも試してみたい。

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